今年も台風シーズンがやってきました。この夏は豪雨による川の氾濫や、その被害も多く見受けられました。
この橋脚はまだ新しいようにも見受けられます。私たち技術者にとって構造物の崩壊は心が痛む出来事です。
このような自然災害にも長きに渡り、持ちこたえている美しい橋があります。現在の東海道・国道1号線、揖斐川・長良川に架かる…
「伊勢大橋」です。
これはちょうど5年前の写真です。桑名側から伊勢大橋に入ります。あいにくの雨ですが道中をお楽しみください。
1934年(昭和9年)完成、ちょうど築90年です! 当時はこの交通量、車体重量を計算に入れていたのかしら?
全長はおよそ1.1km、当時は東洋一の長さを誇ったようです。
鉄橋を構成する鉄骨の組み方は優雅で美しい!
ところで1号線には先の「伊勢大橋」と、木曽川に架かる「尾張大橋」があります。
ふたつの橋は私にとって幼き頃の思い出があります。父の実家が三重県にあり、父の車でこの道を通っておじいちゃん、おばあちゃんに会いに行くのが楽しみで、この橋を渡ると「三重県に入った!」とワクワクしたものです♪
当時は東名阪自動車道が全通しておらず、1号線の南方の23号線(名四国道)を利用することもあったのですが…
(以下2点 Wikipediaより転載)
そこに架かる鉄橋は1963年(昭和38年)に完成したもので、鉄板を溶接した箱型の鉄骨材で構成されています。そのシンプルな姿が幼少期の私には「つまらない橋」だったのです。
23号線は片側2車線で走行はスムーズなのですが、片側1車線でも1号線の「美しい橋」を渡ることが楽しみな少年でした(笑)
さぁ、1号線に戻りましょう。次に木曽川に架かる…
「尾張大橋」を渡ります。
大きな鉄橋のアプローチに架かる、両サイドの低い鉄橋もよく覚えているなぁ…
こちらは伊勢大橋より1年早い1933年(昭和8年)に完成しています。全長はおよそ880m。
鉄骨の組み方は伊勢大橋と同じで、とても美しい!
溶接に頼らないリベットでの接合が無骨でたくましい!
構造体の美しさと言えば…オリンピックが開催されたパリの「エッフェル塔」を思い出します。
こちらは1889年完成で築135年! 現代の…例えば東京スカイツリーにはない繊細な構造美がありますね。
私たちが携わる建築物は、1981年(昭和56年)「新耐震設計法」施行以前の建築物を「旧耐震」と総称し、今後の大地震での危険性が危惧されています。
それに引き換え土木構造物…これら鉄橋は昭和初期の計算基準で、鋼材の強さ、支える橋げたのコンクリート強度、埋設される杭の性能も現在とは異なります。
それが90年以上経過して老朽化、交通量が増大、大雨の河川の激流に耐えながら、使われ続けていることに怖さも覚えます。
この「伊勢大橋」「尾張大橋」は新しい橋に架け替えられる工事(上部にアーチの無い橋)が始まっており、この美しい橋を眺められるのもあと数年。
できれば現代の技術を駆使してこの「古くも美しき架け橋」を残してほしかったなぁ・・・
【追伸 2024.09.27】
ブログアップしたおよそ2週間後、ネットニュースにも出ていました。さらに詳しい情報や写真が掲載されていますよ!
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