オリーブ設計 スタッフブログ

2018.05.07

終わり名古屋の城

Naruki.M

みなさま、ゴールデンウィークはどうお過ごしでしたか? 私がこの連休中にぜひ行きたかったのが『名古屋城』 天守閣を木造で建て替えるため、連休が終わる5月6日をもって『入場禁止』になってしまうからなのです。新天守閣の完成予定は2022年。(建設会社の提案を5年も短縮し大丈夫か?)

 

門をくぐると海外からの旅行ブームも手伝って多くの人だかりでした。私はおそらく40年ぶりの訪問でしょうか? まったく記憶にありません。弊社から徒歩で10分ほどの場所にありながら疎遠でした。

 

『尾張名古屋は城でもつ』大阪城、熊本城と並んだ日本三名城とか。延べ面積では日本一を誇り、この金のシャチホコはあまりにも有名です。

 

城の中は博物館になっています。私はこうした展示模型が大好き! 見ていて飽きません。写真下のお堀の手前に現在のオリーブ設計はあります。(なかなかの城下町にあるではないか・笑)

 

シャチホコの実物大のレプリカをパチリ。娘はこの2日後、学校の遠足の行先が名古屋城。雨天の予報で遠足が中止となりそうなので今回連れてきました。(ところが雨天決行でまた訪問したとのこと・笑)

 

そして木軸の模型。報道によると…天守閣を現状のまま耐震補強を施すと工事費は30億円前後。木造で建て替えると、なんと500億円! さらに土台の石垣にも問題がありそうで…

 

1615年(およそ400年前)に徳川家康の命令により建てられました。

 

以前の天守閣の内部は、木造が露出していて重厚な雰囲気でした。

 

1945年(昭20)に空襲により焼失。神社仏閣が多い京都や奈良はまぬがれましたが、軍事工場があった名古屋は攻撃の対象に。こうした史跡が無くなったのは日本史において本当にもったいない出来事です。

 

終戦後の1959年(昭34)に鉄骨鉄筋コンクリート造で再建。地元商店街の尽力や、全国からの多額の寄付金によって建てられ『人々の思い』がこめられています。その建築も60年ほどが経過し、残念ながら耐震上で現在の構造基準に見合わなくなってきました。

 

このたびの天守閣の建て替えはそもそも耐震化のため。それを木造で再建…それも現名古屋市長いわく『(焼失前の記録である)昭和実測図に基づいた本物復元』を原則としているとのこと! ちょっと待ってちょー、焼失前の木造が現行法規に適合できるのでしょうか? なんらかの免震、耐震構造を加味しないといけないのは当然で、現市長のいう『本物復元』は不可能だと思うのですが・・・

そして新築当初の天守閣は、多くの観光客が押し寄せる積載荷重にもなっていない! それに敵が攻め入ってきたときの対策もあって、内部は迷路のようで階段も狭くて急です。現代でいう『円滑な避難経路』では敵も攻め入りやすい(笑) そして江戸時代には消火栓やスプリンクラーといった消防設備がある訳もない(笑)

 

そして江戸時代にはなかったエレベーター(笑) と申しますか現代ではバリアフリーの考え方は当然の世の中。戦後に再建された天守閣にも苦肉の策として、上の写真のようにエレベーターを(途中階までですが)付属させています。新しい天守閣を現市長は『本物復元』にこだわるあまり、その設置見送りを示唆。

 

天守閣の最上階からの景色です。名古屋市はエレベーターを設置しないかわりに『補助器具や人的支援で(抱きかかえて)昇降すること(それも事前予約が必要)』を提案。身障者や弱者の方々から反発があります。さらに市は『分身ロボットが見た景観を体験できる施設設置』の提案も! この景色をロボットからの映像で見てください…とは。みなさん、どう考えますか?

私の考えは『本物に近い復元』。木造にこだわりながらも、安全で、親切で、優しく、かつ美しい建築にすべきと考えます。焼失前の内装写真や断面模型のように、内装が木材で形成されていれば十分に雰囲気は感じられるはず。そしてエレベーターもうまく組み込んで、誰もが楽しめる城とすべきかと。耐震化が目的である以上、構造的に完璧な『本物復元』はありえないのですから。