オリーブ設計 スタッフブログ

2016.06.17

名のある建築とは

Naruki.M

久しぶりの東京出張。夕方の打ち合わせまでに時間ができて『表参道』を歩いてみました。3ヶ月前に来たときは休日で観光客も多くごった返していたものの、今日の平日の昼下がりはのんびりと歩けます。地下鉄の表参道駅からは下り坂がつづき、陽射しは強くなってきたにもかかわらず、木陰の路はそよ風がとても気持ちいい。

この散策の目的はある建築物を見ておくためでもありました。それは『原宿駅』。つい先日、建て替えが発表されましたので解体される前に姿を見たくなったのです。私が高校生、大学生のときに何度も遊びや買い物に訪れた思い出が詰まっているのです。


その駅舎は大正13年に竣工した木造建築。東京都内で現存する木造の駅舎で最も古く、当時流行したイギリス的なデザインですね。写真に収める観光客も多く見受けられました。


発表された新駅舎のデザインは、現行の駅舎とまったく異なる現代的なもの。はたして写真に収める観光客がいるだろうか?乗降客が増加、現駅舎の改札口も手狭になり、時代にそぐわなくなったのも理解できますし、老朽化や耐震性など問題もあろうかと思います。

古い駅舎といえば『東京駅』
レンガ造りの丸の内駅舎は世間的に有名ですが、東京駅は乗り換えで利用するばかりで、外から駅舎を見る機会がなく馴染みがありません。出入りしても新幹線側の八重洲口のほうが便利ですし。
しかし近年、その丸の内駅舎は戦災で消失したドーム屋根を復元させてくれたこと、一見無駄に思えるものに投資してくたことはとても嬉しい。

その復元といえば『名古屋城』
新築当時の木造建築がこちらも戦災で消失、戦後に鉄骨鉄筋コンクリート造で復元されました。
それを元の木造に復元させようとの計画が、今の市長の主導により進められています。しかし、残念ながらこれはレプリカ、複製品。バリアフリーの木造建築、エレベーター付で?原型の木造様式と異なって、現代の基準では構造体である木材を金物で固定しまくるのでは?価値を見いだせるのかなぁ?

現在の鉄骨鉄筋コンクリート造の名古屋城は耐震性など問題はありますが、その天守閣は戦後になって地元商店街の尽力や全国からの寄付金により復元されたもの。その『人々の思い』の詰まったものを永く保存することも大切な気もします。

ちなみに現状の耐震補強なら30億円前後。木造復元なら名古屋市の試算で400億円!技術提案したゼネコンの試算では500億円!!

先頃、世界遺産になろうかと話題になった建築家ル・コルビジェの名建築や、世界中の歴史ある有名建築はどれも 『永く使われ続けてきたもの』そこにその価値を感じます。

古い原宿駅のデザインに価値を感じるのではない。「なんで日本でイギリス調なんだ?」って思う。東京駅もオランダの某駅にソックリであるし…。しかし、私が撮ってきた原宿駅の写真を見た弊社スタッフも「なつかしいですねっ!」と。そうだ、建築物が記憶になっているのだ。記憶に残る建築こそ名建築ではなかろうか。

なんとかならないものだろうか・・・わが青春の原宿駅よ!