ある敷地があるとします。そこには法律により用途地域が決められています。さらに『建ぺい率』『容積率』が指定されています。
『建ぺい率』
敷地面積に対する建築面積(建て坪)の割合
『容積率』
敷地面積に対する延べ面積(延べ床)の割合
その土地の値段が高額な場合、面積が手狭な場合、建築物の計画を練るときは、土地の有効活用のため『建ぺい率』『容積率』を限度まで使い切ることが焦点となります。
例えばマンションの場合、住戸が1戸でも多くて面積が大きいほど、分譲は高く売れ、賃貸は高い家賃を徴収できることになりますね。よって、どんどんノッポな建築物となってしまうのです。
一戸建ての住宅でも同じ現象が起こります。設計中のお住まいは、なんと建ぺい率30%。土地が100坪あっても、建て坪は30坪しか建てられません。よって3階建てになりました。
東京や大阪では、木造の住宅であっても3階建てが名古屋よりもはるかに多いのは、地価が高く敷地が手狭なためですね。
弊社で他に進行している、名古屋の繁華街に建つ商業ビルでも同じ現象で、建築物の『幅』よりも『高さ』が長くなってしまいます。それは、自然界において不自然な姿かもしれません。どう考えても『横』よりも『縦』に長いほうが、地震や強風には不向きですよね。
例えば、東京スカイツリー634m。目的は電波を遠くまで飛ばすことと、世界一の見栄もあって、あんなにノッポになってしまいました。あの塔の高さ以上の『杭』がスパイクされているから大丈夫でしょ!と思っていた方がいらっしゃいましたが、いえいえ、節がついた特殊な杭ではあるものの、杭の長さはたったの50m!(塔の高さの8%)
人の作ったものに『絶対』はありえません。この先どんな想定外の天災が起きるのか…いつも思うことは敷地の条件がどうであっても、可能な限り『自然な姿』に近い建築をご提案したい!その理想を忘れないで職務に励んでおります。
しかしながら、この国土の事情でその理想ばかりを追い求められませんし、オーナー様のご要望に応えることも私たちの重要な職務です。そのような理想と現実の葛藤を感じているからこそ法律で定められた基準のみを『絶対』と信じすぎず、理想的な建築に少しでも近づけたらと考えています。
物事に『絶対』ということはありえない。お世話になったオーナー様が生前、私にこう力説されていました。「私は絶対という言葉が大嫌いじゃ!絶対ということは、絶対ないのじゃ!」
あのぅ…それも絶対ではないのでは?
(意味判りますか・笑)